備忘録ブログ

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直売所隆盛の時代?〜北部九州直売所事情〜

 最近、福岡県内、佐賀県など北部九州で、大型の農産物直売所・道の駅が続々オープンしている。昨年4月には前原市にJA糸島が経営する「伊都菜彩」がオープンし、ほぼ同時期に朝倉市に「三連水車の里あさくら」が開業した。また、今後も久留米市に「道の駅くるめ」(平成20年5月)、筑前町に「ファーマーズマーケット」(平成20年4月)が開業する予定であり、この他佐賀市北部や宗像市、宮若市でも直売所の計画がある。これらの直売所の多くは、計画段階で数億円の売り上げを期待しており、それだけ増えて本当に大丈夫かな?という疑問も感じてしまう。しかし、伊都菜彩は年間12〜13億円という目標に対して、すでに予想を上回る売り上げをあげている。三連水車の里にしても、同じ国道沿いの4?しか離れていない場所に年間65万人が訪れる「道の駅原鶴」があるにも関わらず、当初の目標どおり40万人の来客を達成しそうとのことで、需要はかなりあるようだ。しかもこれらの店舗の施設構成は、レストランや加工所などを併設するなど多様化しており、「農作物を農協に出し終わった後、出せない農産物を安く売る」という一昔前の直売所のイメージとは全く違った形態に進化してきている。

 全国的に見ても直売所は増加しているようだ。 (財) 都市農山漁村交流活性化機構が出しているデータによると、全国の常設・有人の直売所数は、平成14年に2,224店(推定売上約2,500億円)であったのが、平成17年では4,654件(推定売上4,500億円)と、約2倍に増加している。
 この「直売所隆盛の時代」の中で、事務所内でも、お客さんはどのような行動をしているのか、各店舗はどのような取り組みをしているのか、経営は成り立つのか、商品は確保できるのかなどといった直売所に関する話題が多くなってきている。私個人も毎日直売所で買った野菜を食べ、週末は福岡市西部〜佐賀県北部の直売所巡りを楽しむなど、日常生活における直売所への依存が昔と比べてかなり高くなっている。今年、地域情報化の将来像を描く業務や観光計画の実行に関わったが、そこでも直売所に期待する役割は多く、地域における直売所の重要性が高まっているようだ。そこで今回、福岡県西部、佐賀県の直売所の動向について調べてみた。


●福岡県では、中小の直売所の淘汰が起きており、大規模化が進んでいる

 福岡県では、農政部農業技術課石田さんにお話を伺った。 
 直売所数はH15年の259件をピークに減少しており、平成18年度で230件となっている。売り上げは増加の一途であり、平成10年に売り上げが57億円であったのが、平成18年度では200億円に増加した。売り上げが数億円規模の大規模直売所が開業し、周辺の直売所の淘汰が起きている。
 二丈町の「福ふくの里」は、県内の直売所のモデルケースの一つ。露地栽培が多いので品不足になりやすいため、ハウス野菜確保のため、ハウス建設の補助を行っている(直売所がビニールハウス設置費用の3割を負担し、残りの7割を5年間で返済してもらう仕組み)。このほか、観光情報発信やイベントの開催などの地域活動を積極的に行っている。



●佐賀県の直売所数は横ばいだが、生産者の高齢化が課題になっている

 佐賀県では、生産振興部生産者支援課熊谷さん、石松さんにお話を伺った。
 佐賀県の直売所数は、H13、14年の163件をピークに微減したが、その後やや持ち直し、平成18年度では157件となっている。個々の直売所の売り上げは、横ばいまたは増加している。
 直売所が減少した理由としては、複数の直売所が統合して一つの大型の直売所になるケースがある。また、最近の傾向として、農家・生産者の高齢化がますます進んでおり、消費者のニーズに対応した生産物が確保できないため、やむなく閉店するケースが出てきている。
 POSなど、情報機器を使った生産・出荷の管理については、生産者が高齢者が多いため、技術の習得が追いつかないという話を聞く。直売所の情報化は、全国の先進事例と比較してまだ進んでいない。
 消費者と生産者が作物について会話したり、農業体験をしたり、農業をベースにした直売所だからこそできる役割がある。また、直売所は地域の生産者同士が触れあう場、寄り合いの場になっている。
 唐津市七山村の「鳴神の庄」をはじめとした佐賀県の直売所は、福岡市内のスーパー内のインショップで商品を売っている。インショップは生産者にとってのアンテナショップの役割を担っており、そこで売れ行きの良かった、核家族に対応した少ロット販売などの商品を直売所でも展開している。インショップと直売所は補完し合う役割になってきている。


福岡・佐賀県の直売所数の推移

●福岡都市圏住民の日帰り観光・ドライブの目的地に

 直売所の利用客について、最も多いのは地元の人であり、地域の日常的な買い物の場となっている。佐賀市北部の山間地にある直売所では、魚が一番最初に売り切れるそうだ。山で魚が?というイメージを持たれるかもしれないが、山あいに住む地元の人にとって魚を買うことができる場所はそう多くない。

 また、福岡都市圏からの日帰り観光客も大きなターゲットとなっている。唐津市七山村の「鳴神の庄」、佐賀市大和町の「道の駅大和そよかぜ館」の利用客は、約5割が地元、3〜4割が福岡都市圏からの客と言われている。所員の話では、特定の生産者の商品を指名買いしながら直売所を“はしご”する人もいるようだ。

 また、周辺は海・山の自然に恵まれ、風光明媚なところで、絶好のドライブコースとなっている。さらに、伊都菜彩の「あまおうのソフトクリーム」や、道の駅大和そよかぜ館の「渋柿ソフト」など、女性が好きなスイーツや、牡蠣小屋、農家レストランなど、地域独自の食も非常に充実している。これらを組み合わせながら、思い思いにドライブを楽しむスタイルは、福岡都市圏住民の手軽な日帰り観光の大きな選択肢になっている。

 食の安全へのニーズや健康志向は益々強くなっているなか、福岡都市圏の人口は今後も増加すると予想され、中でも時間とお金に余裕のある“アクティブシニア”が増加している。加えて、大型で情報発信力のある直売所が集積してくることで、「直売所が集まっている地域」というイメージが伝わりやすくなることから、集積による相乗効果も期待できる。道路環境の整備も進んでおり、人の動きを見ると、直売所には様々な追い風が吹いているように見える。


●直売所の役割は多様化している

 各直売所の状況についてみると、大規模な直売所が増え、既存の直売所には、差別化を図るところも出ている。特に都市圏西部では伊都菜彩という巨大直売所ができた影響で、周辺の直売所は魚や加工品を充実させるなど独自色を打ち出しているようだ。

 全国的にみると、直売所での野菜の売れ行きを携帯電話でリアルタイムで確認できる仕組みを導入しているところなどがあるが、福岡・佐賀両県の直売所ではまだそこまでの技術を導入しているところはないそうだ。また、食材の生産から消費までを追跡する“トレーサビリティー”についても、履歴を明らかにしたからこその食材への付加価値と、導入コスト・手間を天秤にかけると、まだ導入に踏み切れないという話だった。そういう意味では、まだ今後の生産・流通のコストダウンや、履歴を表示することによる差別化など、技術革新の余地は多いのかもしれない。

 また直売所には、観光情報や地域情報の発信、付加価値のある加工品・レストランの展開、体験農業の提供など、直売所に求められる役割・機能がますます多様化するとともに、利用者へのサービスもいっそう充実してきている。一方で、大規模化・多角化したことの弊害として管理の目が行き届かなくなり、消費者の期待を裏切ることになるようなことがないよう、内部のルールづくりやモラルを遵守する必要性もよりいっそう増すだろうと思う。


●直売所は生産者にとってもメリットがある

 直売所は、生産者の収入面にとっても効果が大きい。農家が卸売市場を通じてスーパーなどの小売り店に200円の野菜を出すとき、農家の手取りは50〜60円となる。一方、直売所での売値が180円の野菜において、直売所の手数料は15〜20%であり、農家の手取りは約130〜150円と2〜3倍にもなる。通常の流通ルートにのせるよりも農家の収入が多く、流通にかかる時間が省けるため新鮮、また消費者の喜ぶ顔が見えるなど、直売所に出す方がメリットを感じることができる要素が多く、生産者のJA離れが進んでいると聞く。それに危機感を感じたJAが近年大規模直売所の経営に乗り出してきたため、大型直売所が林立してきたという状況もあるようだ。ただ、生産者や地元の理解なしに直売所の計画が一人歩きしたため、地元からの反発が起きたり、既存の店舗との生産者の奪い合いが起きているという話もある。


●安心・新鮮の他に、今後はどう地域に貢献しているかが問われるのでは?

 大規模化、多角化がいいことかどうかの議論はさておき、このような現状のなか、直売所には新しい役割や責任が求められている。直売所はもはや単なる「直売所」ではなく、「交流・集客の拠点施設」「まちづくりの核となる施設」としての位置づけが増しており、グリーンツーリズムや特産品開発など、農村の資源を活かした取り組みを総合的に展開していくための核となる施設になっている。今後は、安全・安心・新鮮は最低条件としてクリアしたうえで、直売所がどれだけ地域に貢献しているかが問われる時代になってくるのではないか。

 最後に、佐賀市大和町にある「農事組合法人そよかぜ館」の事例を紹介させて頂きたい。農事組合法人そよかぜ館は、「道の駅大和そよかぜ館」の運営を市から委託されており、ここを拠点として、地域農産物の生産販売の拡大や、ホテル、保育園、病院等への地場産農産物の供給、農業体験教室等による消費者との交流、耕作放棄地を活用した体験農園、農家民泊などグリーンツーリズムの取組を行っている。このような地域貢献活動に対して国も高く評価しており、先日組合は、「平成19年度地産地消優良活動表彰 農林水産省生産局長賞」を受賞した。道の駅大和そよかぜ館の活動は、直売所の地域交流・貢献の一つのモデルケースになるかもしれない。
  1. 2008/03/18(火) 19:59:52|
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